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高配当株 VS 成長株で配当再投資による効果を比較

高配当株の配当再投資は有効な投資戦略として認知されています。その効果は実際どの程度なのでしょうか。

高配当株として認知されているアルトリアグループ(ティッカー:MO)と配当は少ないけど成長が素晴らしいマイクロソフト(ティッカー:MSFT)の両者を配当再投資した場合、時間経過と共に評価額ににどの程度差がでるのかシミュレーションによって確認しました。

 

  

シミュレーションの方法

1998年1月から2019年12月までの月終値をもとに株価チャートを作成しました。

配当再投資については配当利回りはMO:5%、MSFT:1.5%の固定値を使用し、配当を翌月に再投資するという前提でのシミュレーションになります。

 

MO、MSFTの株価推移

まず始めにMOとMSFTの株価チャートを示します。MOは2016年までは成長が順調ですがその後ESG投資などの影響もあり株価が下落しています。MSFTは1999年のITバブル以降、リーマンショックなどを乗り越え右肩上がりの好調な成長を続けています。

MOの平均成長率は7.6%、MSFTの平均成長率は9.8%です。

 

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配当再投資による効果

資産評価額の比較

下図にMOとMSFTそれぞれに配当再投資をした場合としなかった場合の資産評価額チャートを示します。MOは配当利回りが高く年数が経つほど配当再投資をした効果が顕著に表れています。MSFTは配当こそ高くありませんが、成長率が素晴らしく、2019年12月時点では配当再投資を考慮してもMOとMSFTの資産評価額はほぼ同じという結果になりました。

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経過年数と持ち株数

配当再投資によって持ち株数が増加しますが、どの程度増えるのでしょうか。配当を翌月に再配等するという前提ではMOは約10年で持ち株数が1.5倍、20年で2.7倍に到達します。一方MSFTは20年経過後の持ち株数は1.4倍程度になります。

時間が経つほど持ち株数は指数的に増えることから、長期で運用するほど恩恵を得ることができます。

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配当再投資の効果はどの程度の期間が経過すれば体感することができるのでしょうか。下図に投資開始から3年経過時点での配当再投資をした場合としなかった場合の資産評価額のチャートを示します。

MOを1998年1月を基準として配当再投資をすると、しない場合に比べて1年目は1.05倍になり、2年目で1.1倍になり、3年目で1.16倍となります。

MSFTは1年目は1.02倍になり、2年目で1.03倍になり、3年目で1.05倍なります。

MOは配当利回りが高く3年経過時点で再投資なしにくらべて1.16倍の評価額となります。この程度あれば、その効果を体感として感じられると思われます。

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Table 配当再投資による資産評価額の増加率

  MO MSFT
1年目 1.05倍 1.02倍
2年目 1.10倍 1.03倍
3年目 1.16倍 1.05倍

 

まとめ

高配当株の配当再投資は有益な資産運用戦略と認識されていましたが、改めてその効果を確認できました。但し、高配当株といっても株価自体が下落を続けるようであれば、MSFTなどの成長株の利回りには及びません。結局、高配当株と成長株とでどちらが良いかということは一概には言えず、配当の維持や保持期間や株価の変動に大きく影響されます。

 

(備考)改めて高配当銘柄に投資する場合は次の2点に注意が必要です。

・将来にわたって配当を継続的に維持できるのか

 →減配になると配当再投資戦略の効果が減少します

・会社の価値に毀損は生じないか、株価の下落はおきないか

 →株価自体が下落を続け浮上しないようであれば、その価値は成長株に劣る可能性があります

米国個別株で組む高配当・高成長ポートフォリオ(PF1)

配当利回りも高く、株価も成長し、暴落にも強いポートフォリオはないか。そんな夢のようなポートフォリオを探しています。今回、米国個別株で比較的高配当な銘柄を組み合わせて、そんなポートフォリオを過去のチャート(1998/1~2019/12)を参考に検討しました。

 

 

高配当・高成長ポートフォリオ検討の方法

候補とした銘柄

ティッカー:MO、JNJ、MMM、PEP、JPM、PG、SO、VZ、PFE、XOM

配当利回り重視で選んでいますが、それだけでは株価の成長が鈍いので、株価が継続的に成長ており、比較的配当利回りの高い銘柄を候補に加えています。

 

検討の方法

各銘柄の1998年1月から2019年12月までの株価チャートを元に、各銘柄をポートフォリオに組み込む割合を変化させながら、株価の成長率、配当利回り、リスク(成長率の標準偏差σ)、シャープレシオを比較し、"①配当利回り②株価成長③暴落にも強い"組み合わせを検討しました。

それぞれの過去のチャートと成長率等の各値は下記の通りです。 (グラフ縦軸は1998年1月の値を1とした場合の株価になります)

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  MO JNJ MMM PEP JPM PG SO VZ PFE XOM
平均成長率 7.6% 6.7% 6.6% 7.9% 6.2% 5.3% 4.4% 1.8% 1.3% 3.6%
リスク(成長率の標準偏差σ) 0.071 0.050 0.060 0.059 0.091 0.053 0.053 0.066 0.059 0.051
シャープレシオ 1.83 1.63 1.45 1.59 0.84 1.33 1.16 0.54 0.52 1.05
年間Return(平均成長率+配当) 14.3% 9.3% 9.9% 10.7% 8.8% 8.3% 7.4% 4.8% 4.3% 6.6%
配当利回り 6.7% 2.6% 3.3% 2.8% 2.6% 3.0% 4.0% 4.1% 3.9% 5.0%

 ※配当利回りは2020/1時点の値 

 

ポートフォリオ検討の結果

採用した銘柄

バックテストの結果最終的に採用したのは次の4銘柄です。

①アルトリアグループ(ティッカー:MO)

アメリカのタバコ会社です。マルボロが有名ですね。生活必需品セクター。配当利回り6.7%。

 

②ジョンソン・エンド・ジョンソン(ティッカー:JNJ)

製薬や医療などを手がける世界的にも有名な大企業。ヘルスケアセクター。配当利回り2.6%。

 

③スリーM(ティッカー:MMM)

化学・電気素材の会社です。粘着テープなど日本でも目にかけます。資本財セクター。配当利回り3.3%。

 

④ペプシコーラ(ティッカー:PEP)

ご存知 ペプシコーラです。生活必需品セクター。配当利回り2.8%。

 

各銘柄の保有割合

結果としてMO30%、JNJ30%、MMM20%、PEP20%のポートフォリオが最も安定して高い成長が得られ、比較的高い配当を得ることができました。(これを検討PF1と名付けます) 

1998年1月から2019年12月までのポートフォリオ全体の平均成長率は7.2%、配当利回りは4.0%(2020年1月時点)となります。 

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S&P500と今回検討したポートフォリオとの比較

実際にS&P500と比較をしてみました。ほぼ同じ様な推移ですが、2015年からの動きに差が出ています。これはポートフォリオに組み込んでいるMOの影響が大きいです。また、2016年以降は検討PF1では下落しており、将来的にどうなるのかが気になるところです。 (グラフ縦軸は1998年1月の値を1とした場合の株価になります)

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実際に平均成長率等の各指標を数値で確認します。検討PF1は数値上もS&P500よりも優れて見えます。気になるのが暴落に強いかどうかですが、リスク(成長率の標準偏差σ)がS&P500よりも小さくなっており、暴落時にも強いと思われます。またシャープレシオも倍近い値になっており、リスクに対して効率的にリターンを得ることが出来たポートフォリオと言えます。

 

またそれぞれの個別株単独の各数値と比較してみます。個別株単独に比べるとリスク(成長率の標準偏差σ)が小さくなっており、株価変動が抑えられています。これが分散の効果ですね。

平均成長率や年間リターンはMO単独が最も優れていますが、リスク分散という観点と、分散をしながらもリターンを最大化するという観点から成長率、シャープレシオ等を見ても良いポートフォリオが組めていると言えるのではないでしょうか。

 

  検討PF1 S&P500 MO JNJ MMM PEP
平均成長率 7.2% 5.4% 7.6% 6.7% 6.6% 7.9%
リスク(成長率の標準偏差σ) 0.037 0.043 0.071 0.05 0.06 0.059
シャープレシオ 2.667 1.447 1.834 1.632 1.447 1.591
年間Return(平均成長率+配当) 11.2% 7.4% 14.3% 9.3% 9.9% 10.7%
配当利回り 4.0% 1.9% 6.7% 2.6% 3.3% 2.8%

 ※配当利回りは2020/1時点の値 

 

次に実際に暴落に強いかどうか、各月の株価の成長率をもとにグラフで比較してみましょう。1を超える時が株価の上昇、1より小さいときが下落になります。(グラフ縦軸が各月の株価成長率です)

例えば2000年からのITバブルの際は、検討PF1ではあまり下落が見られませんが、S&P500では大きく下落しています。2008年からの住宅バブル、リーマンショックではどうでしょう。S&P500が0.85を下回るのに対し今回の検討PF1では0.9程度と控えめになっており、比較的安定していると言えます。その他の時期を見ても、S&P500の変動幅に比べると若干小さくなっており、変動が小さく安定して成長してきたPFと言えます。

検討PF1の組み入れ銘柄数は4と少ないですが、それぞれが違った動きをしており、また組み入れ割合を調整することでポートフォリオ全体の変動を抑えることが出来ています。

 

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なぜ暴落に強いポートフォリオとなっているのかみてみましょう。

今回組み入れた銘柄とS&P500の株価チャートを次に示します。2000年からのITバブルの際、今回の銘柄はいずれもあまり下落していません。生活必需品セクターやヘルスケアセクターからの銘柄選定のため当たり前と言えば当たり前ですね。MMMは下落どころか継続的に上昇しています。

 2008年からの住宅バブル、リーマンショックではどうでしょう。いずれの銘柄も下落は見られますが、S&P500ほどではありません。特にJNJは下落率が低くポートフォリオ全体へのダメージを和らげてくれていることが分かります。

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まとめ

 過去の株価チャートを元に、株価の成長率、配当利回り、リスク(成長率の標準偏差σ)、シャープレシオを比較し、「①配当利回り②株価成長③暴落にも強い」を成立させる組み合わせを検討しました。結果として今回検討した銘柄の組み合わせの中ではMO30%、JNJ30%、MMM20%、PEP20%のポートフォリオが最も優れた結果を残しました。 

 

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今回の検討は過去の実績をもとにしたものであり、将来を保証するものではりません。投資の判断は自己責任にてお願い致します。また各データは、誤りがある場合もありますので信頼できるソースにてご確認をお願い致します。

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何も考えずに債券を買ってない?どの程度ポートフォリオに債券を加えるべきか(S&P500と債券ETFでシミュレーション)

外国株を中心とした資産運用において債権をポートフォリオに加えるべきか悩みます。債券を入れることでリスクヘッジになるという話は聞きますが、実際はどうなのだろうと思いシミュレーションを行いました。

 

シミュレーションでやったこと

・S&P500(SPX)と債券ETF(IEF)の過去のチャートを元に、保有比率を変えてチャートを作成。

・その際、リスク(成長率の標準偏差)とリターン(成長率)、配当、シャープレシオを数値化し、債券ETFを組み入れることによる効果を整理。

 

※使用したデータは2007年8月から2019年12月までの月足データ

※シャープレシオはリターンに対するリスクの比率。シャープレシオ={(株価成長率+配当利回り)-無リスク資産の収益率}/(成長率の標準偏差)にて算出 

 

 

S&P500(SPX)と債券ETF (IEF)の個別チャート

まずはじめにS&P500(SPX)と債券ETF (IEF)のチャートを比較します。2007/8の始値を1としてグラフ化しています。両者の相関係数は0.62と緩やかな相関があるといえます。

債券ETFの特徴として株価暴落時でも大きな下落がないことが挙げられます。但し、景気回復時においても大きな成長はありません。実際に債券ETF(IEF)をチャートで見ると2007年からの米国住宅バブル、リーマンショックにおいて大きな下落は見られませんが、逆に2010年以降の景気回復時においても大きな成長は見られません。

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両者の成長率、成長率の標準偏差、シャープレシオ、配当を数値で確認します。成長率の標準偏差σ以外はS&P500(SPX)が圧倒的に優れており、その結果シャープレシオで見てもS&P500(SPX)に軍配があがります。

  S&P500(SPX) 債券ETF(IEF)
平均成長率(年) 6.4% 2.2%
成長率の標準偏差σ 0.04 0.02
シャープレシオ 1.665 1.485
配当 1.9% 1.7%
年間Return 8.3% 3.9%

 

 

S&P500(SPX)と債券ETF(IEF)で作ったポートフォリオチャート

S&P500(SPX)と債券ETF(IEF)の2名柄でポートフォリオを構築した場合の過去の株価チャートを見ていきましょう。6本のグラフはそれぞれS&P500(SPX)と債券ETF(IEF)の保有比率を変化させたものです。

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IEFの比率が増えるほど、チャートがなだらかになっています。特に2007年からの下落相場ではポートフォリオ全体の下落を和らげてくれています。但し、その後の回復時期では成長が鈍く、逆に成長を阻害する要因になっていることが分かります。

 

実際に成長率と成長率の標準偏差σ、シャープレシオ、配当を含めたトータルリターンを見てみましょう。

 

債券ETF100%

(IEF)

S&P 30%
IEF70%
S&P 50%
IEF50%
S&P 75%
IEF25%
S&P 90%
IEF10%

S&P500 100%

(SPX)

平均成長率(年) 2.2% 3.7% 4.5% 5.5% 6.1% 6.4%
成長率の標準偏差σ 0.018 0.015 0.020 0.031 0.038 0.043
シャープレシオ 1.48 2.82 2.52 2.00 1.78 1.66
配当 1.70% 1.77% 1.82% 1.88% 1.92% 1.94%
年間Return 3.9% 5.4% 6.4% 7.4% 8.0% 8.3%

 

着目すべきはS&P500 30%と債券ETF70%で保有した際のポートフォリオです。成長率の標準偏差σは債券ETF100%のときよりも小さくなっています。その他の成長率や年間のリターンで見ても債券ETF100%より優れた結果となっています。つまり債券ETF100%で持つよりも債権ETF70%、S&P500 30%で保有したほうがリスクが小さくリターンが大きい、安定したポートフォリオとなっていることが分かります。

これは2006年以降の株価の動きが関係しています。2006年以降はIEFのチャートはほぼ上昇していませんが、これにSPXを加えることで2006年以降も成長が継続され、全体出見ると安定した成長を維持することが出来ています。

 

一方、S&P500の比率が多いポートフォリオの場合、債券を加えることで成長率の標準偏差σは小さくなり、シャープレシオも上がりますが、成長率と年間のリターンは下がります。ですので、個人的にはいれなくても良いかなと思いました。ただ少し加えることでポートフォリオ全体の値動きは小さくなるので、ポートフォリオの激しい値動きは心臓によくないという方は精神安定剤的な役割で保有することは良いと思います。

 

結論 ポートフォリオに債券ETFを加えることで得られる効果

債券重視のポートフォリオを組む場合、債券100%よりもS&P500を加えたほうがポートフォリオ全体の成長は安定する。保有比率のお勧めは債券ETF(IEF)70%:S&P500(SPX)30%。

S&P500などの株式重視のポートフォリオに債券を組み入れた場合、その効果はポートフォリオ全体の値動きを柔らかくする。但し、成長も鈍化するので精神安定剤的な役割と考えたほうが良い。攻めのポートフォリオの場合は不要。

・S&P500は既にかなり分散されているので、ここに債権を入れて更に分散させても、リスクとリターンのバランスを向上させる効果は薄い。

 

感想 シミュレーションの結果

私からすると以外な結果でした。当初はS&P500を中心としたポートフォリオに、債券を若干含めることでリスクが減りトータルリターンが増えると想定していました。しかし、実際はそのようなことは無く、逆に債券を中心としたポートフォリオに若干のS&P500を加えることで大きな効果が得られました。

また今回は債券ETFとしてIFEを採用しましたが、その他の債券も大まかには同じ様な動きをしているためどの債券ETFでも同じ様な結果になると思われます。

 

投資の判断は自己責任にてお願い致します。また各データは、誤りがある場合もありますので信頼できるソースにてご確認をお願い致します。

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