外国株を中心とした資産運用において債権をポートフォリオに加えるべきか悩みます。債券を入れることでリスクヘッジになるという話は聞きますが、実際はどうなのだろうと思いシミュレーションを行いました。
シミュレーションでやったこと
・S&P500(SPX)と債券ETF(IEF)の過去のチャートを元に、保有比率を変えてチャートを作成。
・その際、リスク(成長率の標準偏差)とリターン(成長率)、配当、シャープレシオを数値化し、債券ETFを組み入れることによる効果を整理。
※使用したデータは2007年8月から2019年12月までの月足データ
※シャープレシオはリターンに対するリスクの比率。シャープレシオ={(株価成長率+配当利回り)-無リスク資産の収益率}/(成長率の標準偏差)にて算出
- S&P500(SPX)と債券ETF (IEF)の個別チャート
- S&P500(SPX)と債券ETF(IEF)で作ったポートフォリオチャート
- 結論 ポートフォリオに債券ETFを加えることで得られる効果
- 感想 シミュレーションの結果
S&P500(SPX)と債券ETF (IEF)の個別チャート
まずはじめにS&P500(SPX)と債券ETF (IEF)のチャートを比較します。2007/8の始値を1としてグラフ化しています。両者の相関係数は0.62と緩やかな相関があるといえます。
債券ETFの特徴として株価暴落時でも大きな下落がないことが挙げられます。但し、景気回復時においても大きな成長はありません。実際に債券ETF(IEF)をチャートで見ると2007年からの米国住宅バブル、リーマンショックにおいて大きな下落は見られませんが、逆に2010年以降の景気回復時においても大きな成長は見られません。
両者の成長率、成長率の標準偏差、シャープレシオ、配当を数値で確認します。成長率の標準偏差σ以外はS&P500(SPX)が圧倒的に優れており、その結果シャープレシオで見てもS&P500(SPX)に軍配があがります。
S&P500(SPX) | 債券ETF(IEF) | |
平均成長率(年) | 6.4% | 2.2% |
成長率の標準偏差σ | 0.04 | 0.02 |
シャープレシオ | 1.665 | 1.485 |
配当 | 1.9% | 1.7% |
年間Return | 8.3% | 3.9% |
S&P500(SPX)と債券ETF(IEF)で作ったポートフォリオチャート
S&P500(SPX)と債券ETF(IEF)の2名柄でポートフォリオを構築した場合の過去の株価チャートを見ていきましょう。6本のグラフはそれぞれS&P500(SPX)と債券ETF(IEF)の保有比率を変化させたものです。
IEFの比率が増えるほど、チャートがなだらかになっています。特に2007年からの下落相場ではポートフォリオ全体の下落を和らげてくれています。但し、その後の回復時期では成長が鈍く、逆に成長を阻害する要因になっていることが分かります。
実際に成長率と成長率の標準偏差σ、シャープレシオ、配当を含めたトータルリターンを見てみましょう。
|
債券ETF100% (IEF) |
S&P 30% IEF70% |
S&P 50% IEF50% |
S&P 75% IEF25% |
S&P 90% IEF10% |
S&P500 100% (SPX) |
平均成長率(年) | 2.2% | 3.7% | 4.5% | 5.5% | 6.1% | 6.4% |
成長率の標準偏差σ | 0.018 | 0.015 | 0.020 | 0.031 | 0.038 | 0.043 |
シャープレシオ | 1.48 | 2.82 | 2.52 | 2.00 | 1.78 | 1.66 |
配当 | 1.70% | 1.77% | 1.82% | 1.88% | 1.92% | 1.94% |
年間Return | 3.9% | 5.4% | 6.4% | 7.4% | 8.0% | 8.3% |
着目すべきはS&P500 30%と債券ETF70%で保有した際のポートフォリオです。成長率の標準偏差σは債券ETF100%のときよりも小さくなっています。その他の成長率や年間のリターンで見ても債券ETF100%より優れた結果となっています。つまり債券ETF100%で持つよりも債権ETF70%、S&P500 30%で保有したほうがリスクが小さくリターンが大きい、安定したポートフォリオとなっていることが分かります。
これは2006年以降の株価の動きが関係しています。2006年以降はIEFのチャートはほぼ上昇していませんが、これにSPXを加えることで2006年以降も成長が継続され、全体出見ると安定した成長を維持することが出来ています。
一方、S&P500の比率が多いポートフォリオの場合、債券を加えることで成長率の標準偏差σは小さくなり、シャープレシオも上がりますが、成長率と年間のリターンは下がります。ですので、個人的にはいれなくても良いかなと思いました。ただ少し加えることでポートフォリオ全体の値動きは小さくなるので、ポートフォリオの激しい値動きは心臓によくないという方は精神安定剤的な役割で保有することは良いと思います。
結論 ポートフォリオに債券ETFを加えることで得られる効果
・債券重視のポートフォリオを組む場合、債券100%よりもS&P500を加えたほうがポートフォリオ全体の成長は安定する。保有比率のお勧めは債券ETF(IEF)70%:S&P500(SPX)30%。
・S&P500などの株式重視のポートフォリオに債券を組み入れた場合、その効果はポートフォリオ全体の値動きを柔らかくする。但し、成長も鈍化するので精神安定剤的な役割と考えたほうが良い。攻めのポートフォリオの場合は不要。
・S&P500は既にかなり分散されているので、ここに債権を入れて更に分散させても、リスクとリターンのバランスを向上させる効果は薄い。
感想 シミュレーションの結果
私からすると以外な結果でした。当初はS&P500を中心としたポートフォリオに、債券を若干含めることでリスクが減りトータルリターンが増えると想定していました。しかし、実際はそのようなことは無く、逆に債券を中心としたポートフォリオに若干のS&P500を加えることで大きな効果が得られました。
また今回は債券ETFとしてIFEを採用しましたが、その他の債券も大まかには同じ様な動きをしているためどの債券ETFでも同じ様な結果になると思われます。
投資の判断は自己責任にてお願い致します。また各データは、誤りがある場合もありますので信頼できるソースにてご確認をお願い致します。