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日本型雇用における人材流動化について(日本社会のしくみ/小熊英二著の感想)

小熊英二(慶應義塾大学総合政策学部教授)さんの書かれた日本社会のしくみを読みました。

まずこの本の概要ですが、日本社会の雇用形態についてその歴史と成り立ち、海外との形態の違いについて書かれています。アメリカは転職が盛んだったり、解雇が簡単だったりという話をよく聞きますが、その理由が書かれています。

「転職」について考える際、非常にためになりました。


日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)

もくじ

 

なぜ海外は雇用が流動的なのか

・海外と日本の雇用の違いは大きく異なります。イメージをFig.1に示します。海外は職種基準での人材の異動想定や社会保障が組まれており、日本は会社基準での人材異動想定や社会保障が組まれています。

・海外は営業やエンジニアなど職種ごとの仕事内容が明確に決まっており、それに必要なスキル(学位や免許)も明確。景気変動により仕事が無くなったり、仕事が出来ないと解雇されるが、同じ職種であれば仕事内容は大きく変わらないのでスライド的な転職が容易。また社会保障も会社単位ではなく職種単位となっており、会社間の異動がしやすい。

・一方、日本は基本単位を会社として全てが構成されている。採用も会社が一括採用し、その後各職種に振り分けるという配属形態である。景気が悪くなり仕事が減った場合は解雇せず、社内の配置転換や出向で対処しようとする。年金や保険などの社会保障も会社単位。社内がガラパゴス化し、社内特有のスキルが発展しやすい。

・日本と海外の雇用の違いを示す話として、海外で「あなたの仕事は?」と聞くと、「エンジニアで課長でGEで働いています。」と答えるが、日本で同じ質問をすると、「日立で働いており、課長をしており、エンジニアです。」と答えるという。これは雇用を、海外では職種を基準にしている、日本では会社を基準としていることを表す例となる。

 

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Fig.1 日本型雇用と海外型雇用のイメージ(青矢印が人材の移動、ハッチングが社会保障の組織)

 

海外型(アメリカ、ドイツ)と日本型のメリットデメリット

・海外型と日本型ではお互いにメリットデメリットがあり、それは雇用する側、される側の両者に存在する。

・海外では給与を上げようとすると公的資格の取得や学位が必要であるが日本は年齢と共に社内資格が上昇し給与があがっていく。

・その他は下記表に記載

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日本社会での転職はこれからどうなるのか(個人的な感想)

日本は非常に雇用の流動性が悪くそれは社会のしくみに起因しています。よくリクルートやDODAのCMを見るといかにも転職が容易なものの様に感じるかもしれませんが、日本社会のしくみからして転職は非し辛い環境であると言えます。一方、日本社会はこれからの人口減少を背景として、働き手を流動化させ成長産業への人材転嫁をはかっていきたいところであります。

長年をかけて形成された日本社会のしくみは雇用の流動化に対しては障害となっています。また今時はやりたい仕事をやるというのが当たり前になりつつありますが、そういった時代背景とも噛み合わなくなっています。こういったことを踏まえ社会のしくみ、雇用についての変化が必要と考えます。

また、個人的には実際に転職するまで、転職は海外型の雇用流動をイメージしていましたが実際には、やはり日本社会の雇用形態が色濃いと感じました。会社独自のルール、仕事の境界が曖昧、仕事内容が募集要項と異なるetc。